近代社格制度とは、「延喜式神名帳」に倣って、明治維新以降に新たに神社を等級化した制度である。
第二次世界大戦後に廃止されたが、「旧社格」などの名称で神社の格を表す目安とされる。
近代社格制度では、社格を官社・諸社(民社)・無格社に分ける。伊勢の神宮は、「全ての神社の上にあり、社格のない特別な存在」とされた。
官社:218社
- 祈年祭・新嘗祭に国から奉幣を受ける神社。
- 官社は神祇官(明治時代初期の朝廷の祭祀や諸国の官社を司る最高国家機関)が祀る官幣社と、地方官(国司)が祀る国幣社に分けられる。
- 律令制の社格に倣ってそれぞれに大・中・小の格があり、「昇格」が行われた。
- 官幣社は二十二社や天皇・皇族を祀る神社など朝廷に縁のある神社。
- 国幣社は各国の一宮や地方の有力神社。
- 官幣社・国幣社に実質的差異はないとされる。
-
官幣大社>
国幣大社>
官幣中社>
国幣中社>
官幣小社>
国幣小社>
別格官幣社
別格官幣社
- 国家に功績を挙げた忠臣や、国家のために亡くなった武将・志士・兵士などを祭神として祀る神社。
官幣国幣社等外別格
- 伊勢山皇大神宮が明治4年(1871年)に列された社格ではあるが、正式に制定された社格ではない。
諸社:49,715社
- 諸社は府県社・郷社・村社に分類される。
- 府県社は府、県、台湾の州、台湾、北海道、樺太の庁から奉幣を受ける。
- 郷社は府県、郡、または市から奉幣を受ける。
- 村社は市町村から奉幣を受ける。
- 明治政府は当初、郷社・村社については、氏子を管理するための特定の行政機能を持たせた。
- 江戸時代までの寺請制度に代わって、国民に対して在郷の神社の氏子となり、出生や住所の移動の際には守札の発行などが義務づけられた。
- 郷社や村社といった神社の数は、村とほぼ同数の18万社あまりが存在したが、明治39年の神社合祀令を経ると11万社余にまで減った。
-
府社=
県社=
藩社>
郷社>
村社
神饌幣帛料供進社
-
明治40年(1907年)からは、府県郷を始め、村社(指定神社以上)が、
例祭に地方公共団体の神饌幣帛料(しんせんへいはくりょう)の供進を受けることが、
大正3年(1914年)4月からは祈年祭・新嘗祭にも神饌幣帛料の供進を受けることが、
それぞれ認められ、神饌幣帛料供進社と称された。
無格社:59,997社
- 無格社は法的に認められた神社の中で村社に至らない神社のこと。
- もともとは正式な社格ではなかったが、後に社格として扱われるようになった。
- 無格社の神社であってもほとんどは氏子を有し、村社以上の神社とは、神饌幣帛料供進がなかった点や境内地が地租もしくは地方税免除の対象とされなかった点などが異なる以外に、目立った相違はない。
- 規模の小さな無格社の多くは、明治末期の神社合祀で廃社とされた。
-
1939年(昭和14年)4月1日、内務大臣が指定した護国神社で、太平洋戦争末期までに51社が指定された。
-
祭祀に際して天皇により勅使が遣わされる神社のこと。
戦後にGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の神道指令により、神社は国家管理を離れ、同時に社格制度も廃された。
なので、現代では公式の社格というものは存在しない。
ただし、古代以降の制度上の呼称が社格のようなものとして扱われる場合がある。「式内社」や「一宮」がその例であり、
また近代社格制度における社格が「旧社格」として表される場合である。
また、戦後の社格制度が廃された直後、GHQからの干渉から逃れるために、
社号標に彫られた社格に関する箇所をセメント等で埋めた物が、現在でも数多く見られる。
旧社格は、現在の神社の規模や立ち位置を推測する上で、ある程度の指標となり得る。
中には、旧無格社とは思えない程に立派に発展した神社などもあり、興味深いところでも有る。
-
社格制度廃止後は、全ての神社は対等の立場であるとされた(伊勢神宮を除く)。
しかし、旧官国幣社や一部の規模の大きな神社については、神職の進退等に関して一般神社と同じ扱いをすると不都合があることから、
「役職員進退に関する規程」(昭和23年9月30日規程第15号)において特別な扱いをすることと定められた。
その対象となる神社が同規程の別表に記載されていることから、「別表に掲げる神社」を「別表神社」と通称している。
別表神社の追加選定は5年毎に行われるのが通例。
- 朝廷は官位を授けることはなかった。官位を授けることが無かったのは、ここと伊勢神宮のみ。
- 官位とは、天皇が臣下に授けるもの。つまり、皇祖神・天照大神を祀る伊勢神宮と同格または上位の存在。
- 日前神宮・國懸神宮の社家・紀氏は、天皇家よりも古いとされる。
-
以上より、日前神宮・國懸神宮は、旧社格制度では官幣大社に列せられるが、現在は神社本庁の傘下には属さない単立の宗教法人である。
日本国に於いて最も格の高い神社として、日前神宮・國懸神宮は「例外」として扱うべきであろう。