出典:国土地理院
天之狭霧神・国之狭霧神
『古事記』において、山の神である大山津見神と野の神である鹿屋野比売神との間に生まれた一対の神である。
神名にある「狭霧」とは、現代語の「霧」そのものを指しており、立ち込める霧が風景を包み込み、視界を遮りつつも空間に奥行きを与える自然現象を神格化したものである。冠せられた「狭」の字は、先行して生まれた天之狭土神らと同様、神聖なものに対する美称、あるいは霧が細やかに、かつ密に立ち込める様子を形容しているとされる。
天之狭霧神は天上や高所の視界を曖昧にする霧の霊威を象徴し、国之狭霧神は地上や低所を這うように漂う霧の霊威を象徴している。これらの神々は、単独での詳細な事跡は語られないものの、先行して生まれた土の神や谷の神が国土の物理的な土台を整えた後、その空間に大気の湿度や情緒的な奥行きをもたらす役割を担っている。古代の日本人にとって、霧は単なる気象条件ではなく、神域と現世の境界を象徴し、時には山々の神秘性を高めるヴェールのような存在であった。このように、天之狭霧神と国之狭霧神の誕生は、国土が単なる乾燥した土地ではなく、水気を含んだ大気によって包まれ、生命の気配や神聖な気配が充満する完成された世界へと至る過程を象徴している。
また同時に生まれた八神の連関は、土(天之狭土神・国之狭土神)から霧が立ち(天之狭霧神・国之狭霧神)、霧によって暗くなり(天之闇戸神・国之闇戸神)、暗くなって惑う(大戸或子神・大戸或女神)、などといったつながりに捉える説がある。
神話や伝承に基づき、個人的な解釈を含みます。